◆ワイン試飲会報告 その2 2008/10/9◆         << 試飲会報告 その1  試飲会報告 その3 >>

「モトックス」の試飲会から中1日おいて今回は「稲葉」の試飲会。「稲葉」は名古屋に本拠地を置く、1971年(昭和46年)創業の老舗ワイン・インポーターで、既に当店との取引も20年ほどに及びます。もともとはドイツワインを専門的に取扱い、その道では最も信頼できるインポーターのひとつで、ドイツの醸造元を一軒一軒自分達の足で回り、ワインを見つけ出し、今や名声を得ている数多くの醸造元を世に知らしめたインポーターとして知られます。現在はドイツワインのほか、フランス、イタリア、スペイン、チリなど世界各国のワインを取り扱います。

こちらも春と秋の年2回、全国各地で試飲会が開催されます。東京での会場は飯田橋の某所で、既に何十回と参加していますので通い慣れた道となりました。当日は11:00〜17:00の開催時間で、事前に吉野家の牛丼で腹ごしらえし、11:00ちょっと前に会場に到着。既に数名の参加者が試飲を始めていました。

  

受付を済ませ、テースティングリストを貰い、内容をざっとチェック。ここ「稲葉」のテースティングリストは、ひとつひとつのワインの説明が詳細に書かれているので、初めての人達には親切かもしれません。しかし、私は読まない。
というのも先入観をもって試飲をすると余計な事を考えたりするという理由からです。といっても試飲後に自分の感じたイメージを確認するために利用させてもらっています。
そう考えると、テースティングリストもなかなか奥が深く、もちろん順番が最も大事だろうし、説明もどこまで載せればいいのかなど主催者側も悩むところでしょう。個人的に言わせてもらえば、メモのスペースは必ずほしい。
よく、ワイン名と価格をびっしりと箇条書きにしている簡単なリストもありますが、これはいただけない。メモのスペースがなく、リストの裏に書いたりとか、非常に効率が悪く、後で見直すときに往生してしまう。

早速、用意してきたクリップボード(下敷き)を取り出し、テースティングリストを挟む。これがなかなか調子いい。
テースティング内容を○×記入の人には必要ないかもしれないが、メモをとる人には必需品だ。これで試飲の効率とイライラ感が解消できる。これを忘れた日には試飲本数が20〜30%ほど減ってしまうほどの強力アイテムといえます。前回くらいから「モトックス」の試飲会でもワイングラスを引っ掛けられるボードを貸し出してくれるようになったので、ありがたい。多くの試飲会で普及させてほしいと思う。

         
    愛用のクリップボード           「モトックス」の試飲会で貸し出してくれるボード。とっても便利!

今回の出品ワイン本数は全部で104種類とオリーブオイルが1種類。イタリア、スペイン、フランス、アルゼンチン、チリ、ドイツの順にリストアップされている。まずはいつものように白ワインから順にテースティングを開始する。
イタリアの白は以前にテースティングしたものが多く、これといった新発見はないが、カ・ルガーテ社のソアヴェはやはり品質が高かった。もちろんソアヴェのトップ生産者で3年連続トレ・ビッキリエ受賞という快挙を成し遂げているから当然といえば当然だろう。

カヴァで人気を博しているマ・デ・モニストロル社のシャルドネのスティルワインも印象的だった。アメリカンオークの新樽発酵で樽香は強めだが、果実味豊かで厚みがありマイルド、1600円と価格も手頃でコストパフォーマンスの高いワインだ。

あとはフランス・ベルジュラック地方のシャトー・デ・ゼサールの「キヴェ・プレスティージュ」。こちらもアメリカンオークのバリック樽(小樽)で発酵させた、やや樽香の強めのワインだがバランスよく、フルーティさも申し分ない。
ベルジュラックは現在のボルドーに注目が集まる以前に隆盛を極めた生産地だが、最近ベルジュラックの手頃でおいしいワインをちらほら見かけるようになった。チェックしておきたい産地のひとつだ。

新顔のアルゼンチンの「ドメーヌ・ジャンブスケ」。ここのカベルネは非常に良い出来で、赤い果実のチャーミングな香りがあり、濃縮感は高いが口当りはソフトなとてもエレガントなワイン。ジャンブスケはもともとフランス・ラングドック地方で成功を収めていたが、アルゼンチン・メンドーサに理想の土地を見つけ、移り住んだという人物。こうしたヨーロッパの有能で開拓精神旺盛なワイン生産者が続々と南米を目指しており、アルゼンチンはチリのよきライバルで、将来的にはチリを越えるのではと推測する専門家も多い。
長いことヨーロッパ以外には手を出さなかった「稲葉」だが、チリの「ウィリアム・フェーヴル・チリ」をきっかけに、いよいよ南米に進出。やはり、時代の流れなのか。もちろん、南米ワインの品質が予想以上に高くなってきたこととドル安という魅力は大きいのだろう。



新顔のアルゼンチンワイン
「ドメーヌ・ジャンブスケ」
ラベルはシンプルかつ高級感があってGood!








チリの「ウィリアム・フェーヴル・チリ」。既に当店で取り扱っている銘柄なので再確認のためにチェック。やはり、素晴らしい品質で問題は見当たらない。ワイン通の方ならご存知かもしれないが「ウィリアム・フェーヴル」といえば間違いなくシャブリのトップ生産者、というよりブルゴーニュのトップ生産者と賞賛される歴史的人物で、あのドメーヌ・ド・ロマネコンティでさえ獲得できなかった賞を数々受賞したことでも知られる。その彼が、シャブリの全てを売り払い、世界中を旅して探し出したのが、現在のチリの土地。現在もシャブリの「ウィリアム・フェーヴル」は存在しているが、オーナーは別の会社になっている。「ウィリアム・フェーヴル・チリ」は、いわゆるブティック・ワイナリーで供給量は極めて少ない、もし、どこかで見かけるようなことがあれば、おすすめしたいワインのひとつである。

白ワインの最後はドイツ。ドイツワインは9アイテムと出品数は年々減少している。「稲葉さんがドイツワインに力を入れないと日本のドイツワインはすたれちゃうよ」と言っているんだけど、時代の流れか日本でのドイツワインの消費は上向きにならず、ドイツワインを売る為の労力は他の国のワインより遥かに大きいとの事。個人的にはテースティングをしていて最もホッとするのはドイツワインだし、ドイツワインの味わいは最も官能的ではっきりと分かり易い。日本人には一番むいているワインだと思うのだが、流れはそうではない状況が続いている。
出品されたワインの半数がトロッケンタイプ(辛口)で、ケスター・ヴォルフ、ファフマン、プリンツなどの一流どころの2000円前後のワイン。果実味豊かでボリュームがあり洗練された味わい、同一価格帯のイタリアン白ワインより断然、魅力的だと思うのだが、まだまだ日本ではそのことが知られていないのが残念だ。
そして、甘口ワイン。実は「稲葉」の試飲会での一番の楽しみがこのコーナー。私はスピッツ(吐き出す)によるテースティングだが、ここだけは飲み込む。もったいなくてバチが当ると、いつも思って飲み込んでしまう。
今回も素晴らしいワインを見つけた。驚くべき品質のデザートワインだが、同業他社に知られたくないので、あえて銘柄は伏せておく。中身はほとんどリースリング100%の貴腐ワインで、表示と価格はアウスレーゼ!はっきりとしたオレンジのフレーバーがあり、凝縮された味わい。2006年の素晴らしいヴィンテージが造り上げた天からの贈り物のようなワインで今飲んでも申し分ないが、この先間違いなく10年、20年と熟成を続けるだろう。

続いて赤ワイン。ここもイタリアワインが多い。おおよそ出品ワインの1/3程度がイタリアワインだろうか。
まずは当店でも取扱いのある、お馴染みのファルネーゼ社のワインをチェックする。ファルネーゼは近年、イタリアワインの評価本においてもイタリアのベスト生産者に度々取り上げられるほど人気が高い。その理由はやはりコストパフォーマンスの高さからだろう。1000円代のワインでも十分おいしい。特に「カサーレ・ヴェッキオ」が日本に初輸入された時は衝撃的だった。たしか、1600円程度の価格で果実味たっぷり、まろやかで上品な樽香が印象的だったのを記憶している。最近、日本のワイン雑誌でも高く評価されたらしく、この頃、問合せが多い。今回、新しい2007年ヴィンテージがリリースされたが、ほとんど2006年と遜色ないように感じた。「カサーレ・ヴェッキオ」が好きな方はぜひ、ファルネーゼの「ドン・カミッロ」を飲んでみるといい。価格は同じだが上質な樽香が楽しめる。個人的にはこちらの方が好みだ。

グラッソ・フラテッリという生産者の1998年産のバルバレスコがあった。10年経て、すでに飲み頃で価格は3500円とかなりお買得。やや茶系の色合いで口当りは優しくなめらかでマイルド。まさにバルバレスコらしい味わい。

今回初輸入されたスペインの「ボデガス・ロマブランカ」のワインもなかなか好印象だ。「T(ウノ)」、「V(トレス)」、「W(クアトロ)」と1500〜2800円の3種類あるのだが、使用されている葡萄が2種類、3種類、5種類と増えていき複雑味とボリューム感が増していく。聞けば、ロバート・パーカーも高得点を付ける新世代のモダン・スパニッシュワインらしい。




こちらも新顔「ボデガス・ロマブランカ」の「ウノ」
イタリアワインのようなラベルのモダン・スパニッシュ・ワイン








ボルドーを5〜6種類チェックしているあたりで、だんだん調子悪くなってきた。味は分かるのだが、集中力が途切れがちで、きっちりメモが取れない。おとといの「モトックス」の試飲会の疲れがでてきたのか?
ここからは全部テースティングするのは無理そうなので目ぼしいワインのチェックに変更。

コート・デュ・ローヌの「テール・ド・ミストラル」というワイン、これはラベルがとてもポップで目立つ。品質もなかなかのもので、濃厚、まろやか、ジューシーでバランスよし。リストにノンフィルターとあったので、この濃さに納得。




「テール・ド・ミストラル」
とてもポップなラベルが目を引く。
最近、コート・デュ・ローヌのワインは
斬新なラベルが増えてきた。






チリのウィリアム・フェーヴルの「ラ・ミシオン カベルネ・ソーヴィニヨン リゼルバ」。どっしりと重厚な果実香、ほどよい甘みと上品な樽香が絡み合い、力強く、マイルドな風味を醸し出している。これで1700円!トスカーナのワインにこの倍以上のお金を払うなら、明らかにこちらを選んだほうがいいのでは?と思った。

「稲葉」の試飲会では定番となっているオリーブオイルがある。いつも、口直し用に用意されているバケットと「バローネ・コルナッキア」のオリーブオイルだ。「バローネ・コルナッキア」は、イタリアの赤ワイン「モンテプルチアーノ・ダブルッツオ」の有名な造り手で、今や日本でも「モンテプルチアーノ・ダブルッツオ」は人気が高く、数多くの造り手のワインが輸入されているが、この人気の火付け役となったのは、おそらく「バローネ・コルナッキア」だろう。
そのワイン造りの名手が少量のオリーブオイルも造っている。僅か1200本のオリーブの木から造られる「オリオ・エクストラ・ヴェルジーネ・ディ・オリーヴァ」という名のエクストラ・ヴァージン・オイルだ。
黄緑がかった黄金色で口に含むと爽やかな青味があり、まったく油っぽさを感じさせない。まさにフレッシュな搾りたてのオリーブといった感じで初めて口にした時はとても驚いた。500mlで2100円と値段は張るが、考えようではワインより安いと思える非常に価値のあるオイルだ。


時間は3時を回り、合計87種類のワインをテースティングして終了することにした。実はこの後、渋谷で開催されているフランス食品振興会の「フレンチ・スパークリング試飲会」に行こうと予定していたのだが、時間的にも無理なので諦めることにした。というより予定そのものが、ちょっと無謀だった。


◆ワインのトレンド傾向
こちらもアルゼンチンやスペインのニューゼネレーションといった新世代のワインが目立った。
やはり、どのインポーターもアルゼンチンには注目しているようで、今まで「稲葉」はヨーロッパが主で、南米ワインには慎重だったが、チリの「ウィリアム・フェーヴル」をきっかけに南米ワインに乗り出した。そろそろ機が熟したということなのだろう。少し前までは1000円以下のアルゼンチンワインが多く見られたが、ここにきて1000円台半ばのアルゼンチンワインが増えてきた。このクラスの品質には目を見張るものが増えてきたのは確かだ。これから続々と上陸してくることが予想される。現在の状況では、この先ドル高になることは考えにくいので南米のワインにとってはますます有利になってくるだろう。コレクターやフランスワイン信仰者でない限り、おいしいワインがより安い価格で楽しめることは嬉しい限りである。

◆10/11付けの業界紙データより
業界専門誌「酒販ニュース」によると、やはりチリ、アルゼンチン産の1000円前後のワインは絶好調とのこと。
今年の1〜8月のチリワインの輸入量は前年比36%増で、既に100万ケースを突破、国別輸入量3位は不動。
アルゼンチンはなんと64%増で8位につけている。
他の有力生産国は4位のスペインの伸びがやや鈍化、フランスは4.6%減、オーストラリア、アメリカも前年実績割れの状態とのこと。


                           << 試飲会報告 その1  試飲会報告 その3 >>
        


ページトップへ