◆ワイン試飲会報告 その1 2008/10/7◆                      試飲会報告 その2 >>

先日、ワインの試飲会に行ってきました。今回の試飲会はワインのインポーター(輸入業者)主催のもので、だいたい秋と春に集中的に開催されます。春は夏場に向けての商品紹介、秋は年末や冬場に向けての商品提案が主体で私達、ワイン販売業者にとって、この試飲会は商品仕入れのための最も重要な仕事のひとつです。

日本国内に今、どのくらいのワイン・インポーターが存在するのかは定かでありませんが、1998年以降、急速に増え、100社以上はあるんじゃないかと思います。それ以前は主だったインポーターといえば10社前後だったんですけど、とにかく今は、やたらに多くて名前を聞いたことのない会社が山ほどあります。

    

今回、伺ったのは中堅というよりは既に大手の域に入った「モトックス」社。こちらも10年程前に立ち上がったインポーターで、その当時から取引させて頂いていますが、あれよあれよという間に大きくなって、最も成功したインポーターのひとつではないでしょうか。「モトックス」の試飲会は春と秋の年2回開催で、初回からほとんど出席していますので、もう20回近くになります。最初の頃は、ワイン専門店や酒販店といった小売業者のみを対象とした試飲会でしたが、最近はレストランなどの飲食関係者も参加し、年々盛大になっています。おそらく、インポーター単独の試飲会としては日本最大規模のひとつでしょう。

会場は東京・新橋の某ホテル。開催時間は10時〜17時で自分の都合のよい時間に行って、好きなワインを試飲するという、一般的なスタイル。前回の試飲会の時は、ちょっと風邪をひいていて味が分からず悔しい思いをしたので、今回は少し気合を入れて行って来ました。
到着したのは10時半頃、いつもならこの時間はまだ人は少なく30〜40人程度なのに、今回はすでにごっそりと人が入っていて、「えっ!?どうしたの」という感じ。主催者側も訳がわからないけど嬉しい悲鳴状態。
まず、受付を済ませてワインリストを貰う。今回の出品ワインは181種類。いつもは130〜140種類程度だから今回は過去最高の出品数といえる。私はいつも出品されているワインを全てテースティングしてやろうと企んでいるのだが、今回はちょっと手強い感じ。

リストにざっと目を通し、まずはセオリー通り、白ワインから開始する。基本的にはワインリスト順に試飲していくのがベストである。ここの試飲会はよく研究されているので、リスト順に進むのが最もわかりやすいし、舌に負担がかからないので正確な判断をし易い。

まずは日本初登場のチリワイン「バルディビエソ」の白から開始。これが1000円そこそこの価格ながら、かなりいい!今までのチリワインによくあるコテコテタイプではなく、樽香も上品で明らかに今までの同一価格帯のチリワインより上質で、ラベルも高級感がある。次がこれまたチリの新星「タマヤ」。こちらは1500円のラインで更に上質の納得ゆく品質。チリワインはかなりの種類が日本に輸入されているけれど、よくこんなワインが輸入されずにまだ残っていたかと感心する。チリワイン恐るべし、である。

次がアルゼンチンから初登場の「カリア」。こちらも1000円そこそこながらハイパフォーマンス!南米パワー爆発といったところか。今やユーロ高の影響を受けないドル建て輸入の南米ワインの輸入量は年々増えている。
安さだけではなく、品質の向上もめざましい。それは最新の醸造設備、技術の導入や高地の冷涼な気候の高品質葡萄の使用などによるものだという。確かに年々品質が上がっていることは疑う余地は無い。

             
「バルディビエソ」の営業部長クリスチャン・ソトメイヤー氏         チリの新星「タマヤ」 台風の目となるか?

その後、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、ポルトガル、シャンパーニュ&スパークリングとダダダーッと調子よく、44種類の白ワインを約2時間かけてテースティングして終了。私の場合、1本1本けっこう詳細なメモをとるので他の人より時間がかかる。

残るは赤ワイン。といってもこちらの方が圧倒的に種類が多く、舌にも負担がかかる。明らかに精神力と体力勝負といった感じ。ちょっと大袈裟なようだが、実際の話、1日に100本以上のテースティングをする場合は、いかに集中力を保つかが重要で、集中できなくなった時点で味がわからなくなりアウト。

今回は種類が多いことを考慮して昼食抜きで続行することに決定。といっても昼食をとると味覚が変わってしまうのと緊張感が途切れてしまうので滅多に昼食はとらない。今回は念のため会場に入る前に立ち食いそばで腹ごしらえをしておいたので問題ないだろう。

1時頃から赤ワインをスタートしたのですが、この時間には既に会場は歩くのも大変なほどの大混雑。
ここからはリスト順ではなく、ピンポイントのテースティングに変更。まずは気になっていたチリワインの「バルディビエソ」と「タマヤ」の赤をチェック。白同様にかなりの高品質であることを確認。明らかに今までの飲み応えのあるタイプとは異なり、洗練された飲み飽きしないミディアムなタイプだ。チリワインが次の段階に移行しつつあることを実感したのは私だけではないだろう。

次は品揃えの強化のためと軽めの赤から順番にと考え、ブルゴーニュをチェック。ブルゴーニュは価格の高騰ということもあり、10種類ちょっととボリュームも少なめ。主催者側もそれほど力を入れていない様子だ。いくつかいいのを見つけるが既に当店で取り扱っているワインだった。

次はボルドー。こちらも14種類と今回は力を入れていない模様。確かにボルドーは異常な価格になっているが、探せばまだまだ手頃な価格で良質なワインは存在する。やはりボルドーの香りや舌触りは、舌に馴染みホッとする感がある。今回のボルドーの新商品は、だいたいが2000円以下で高価格帯はない。良い判断だと思う。
年末をひかえた秋の試飲会は例年ならボルドーの高額品が並ぶところだが、今回それを控えたのは色々な意味で賢明な判断かもしれない。市場動向や景気低迷もあるが、価格だけが先走った中身を伴わないワインを消費者に押し付ければ、必ずしっぺ返しがくる。そこまで考えてのことかどうかは分からないが、結果的に良い選択だと思う。

その後、アルゼンチン、アメリカ、オーストラリア、南フランス、スペイン、ポルトガルなどの目ぼしいワインをチェックし、残るはイタリアワイン。いつもイタリアの赤ワインは最後にしている。何故かというと、とってもヘヴィだから。
特にこの「モトックス」は、ロバート・パーカーが高得点を点けるような凝縮度の高いヘヴィなワインは得意分野で、それはイタリアンレストランの顧客が多いという理由からのようだ。
もし、ここからテースティングを始めたら、一気に味覚と気力は消失してしまうだろう。なにせ、30種類ものヘヴィなコテコテワインを立て続けに相手にしなければならないのだから...。

というような感じでテースティングは無事終了。今回は181種類中115種類をテースティング。
終わったのが4時過ぎだったので、約5時間半立ちっぱなしで黙々とテースティングに専念した。今回は集中力も持続していたので、見たいワインはほとんどチェックできたのでまあ、満足といったところか。
以前に別のインポーターのワイン研究会でどこまでテースティングを効率よくできるかという検証をした事がある。その時はたしか125種類のワインを着席で、50〜60人で9時から5時まで昼食30分、トイレ休憩15分のみで、詳細にメモを取りながら次から次へと試飲するというスタイル。その時は終わった時点でみんなヘトヘトで、この125種類あたりが1日にできるテースティングの限界だろうとの結論に達した。

3時の時点で来場者数は1000人を突破し、例年の20〜30%増の人出ということで、まるでお祭り騒ぎのような試飲会だった。


◆試飲会から読み取れる「今後のワイン・トレンド」◆

サントリーやメルシャンなどの大手企業はワインの総輸入量こそ大きいが、取扱いアイテムは多くなく、大量生産品が主体で小回りはきかない。今まで、日本国内のワインの流行を先導してきたのは「モトックス」などのワイン・インポーター達だ。だから、試飲会での新商品の傾向をじっくり観察すれば、おぼろげに今後のワインの流れは見えてくるものだ。

今回、目立ったのは、やはりチリ、アルゼンチンの南米ワイン。それも今までのメジャーな産地ではなく、次世代といえる新しい産地のニュースタイル・ワイン。オーストラリアは、このところ新商品の投入はない。干ばつの影響で生産量も落ち、価格も上がっている。オーストラリアはチリに飲み込まれてしまうのか?という予感もする。
いずれにせよ円高ドル安の影響も大きく、チリは当分の間、伸び続けるだろう。

ボルドー、ブルゴーニュは、いかんせん値上がりしすぎた。このところの金融不安による株価暴落により、高額ワインの需要は一気に落ち込むだろう。はたまた、投資対象となっていたワインが放出される可能性もあるが、このあたりは定かでない。いずれにせよ2000円以下のボルドー・プチシャトーの輸入量は、どのインポーターも増え続けている。ブルゴーニュの低価格品はほとんどタマ切れの状態で、たまに輸入されると瞬時に売り切れるという状態が続いている。

新たなところではポルトガル。「モトックス」も輸入を開始したが、まずは様子見といったところだろう。
スペインも新商品が多く投入された。他のインポーターも同様で1000円台前半のワインに注目が集まっている。

スパークリングなどの「泡もの」も新商品こそ少ないが20種類ほど出品され、現時点での人気の高さを物語っている。シャンパーニュは相次ぐ値上げで客離れの様相が濃く、割安なスパークリングへの移行が進んでいる。
今回、初登場したチリワインメーカー「バルディビエソ」は、実は南米最古のスパークリングワインメーカーであり、なんとチリ国内のシェア60%をもつというトップメーカー。品質も高く、低価格で今後、スパークリングの世界にも南米パワーが吹き荒れることは間違いないだろう。また、今年の夏にチリワイン「コノスル」のスパークリングが世界に先駆け、日本で先行発売されたこともあり、今後チリ・スパークリングの人気は一気に高まっていくと思われる。


全体的な印象としては、コテコテのエキス分たっぷりのフルボディタイプから飲みやすいミディアムボディへと移行しつつある傾向が感じられた。それも自然の流れで、飽きてきたというか、食も和食など国内産の材料に目が向けられるようになったためかもしれない。


◆マナーの悪さに苦言◆

以前のワイン試飲会は酒販店やワイン専門店などの小売業者限定で年齢もそれなりに高く、どちらかといえば静かに黙々と試飲をするというスタイルだったが、ここ数年はレストランなどの飲食業者も参加できるようになってきた。
今回の試飲会も飲食業者が多く、若い世代のレストラン関係者がかなり多く参加していた。
まだ、経験も浅く、試飲会のマナーを知らないといえばそれまでだが、例えば、ワインの前に数人で陣取って試飲をし、他の人が試飲できない状態はあちこちで見受けられし、ワインの個人的評価を他の人に聞こえるような大きな声で話すのもマナー違反だ。それを聞いた人が先入観で正しい判断ができなくなる場合があるという理由からだ。あとは必要以上にワインをグラスに注いで平気で捨てる人。プンプンと香水をつけてくる人。ピクニック気分の人達。彼女、彼氏とデート気分の人達...。

一番気になったのは、口直し用のバケット(パン)の食べ方だ。この試飲会では会場の何箇所かのテーブルにバケットとオリーブオイルのボトル、取り皿が置いてある。それを各自が自由にバケットにオリーブオイルをつけて食べるというスタイルなのだが、多くの人が重ねてある取り皿の上にオイルを注いでバケットにつけて食べ、そのままその場を立ち去っていた。分かりやすく言うと、レストランのバイキングで重ねてある取り皿の一番上に食べ物をよそって、その場で食べて、そのままにして帰るみたいな状況。
「そんなに細かく言わなくてもいいじゃないの」という人もいるかもしれないが、問題は彼らがプロであるという点。
それも、店で接客したり、レストランでお客にサービスしたりする接客業の人間だから情けなくなってくる。

そういえば、去年のここの試飲会でこんな事があった。ワインを吐き出す容器(スピトーン)に平気でティッシュを捨てる人が何人かいた。あーあと思って見ていると、今度はスピトーンの中に溜まったワインを回収にきた若いホテルの従業員がそれを見て、何食わぬ顔でそのティッシュを割り箸かなんかでチョイチョイと押し込んで、その場を立ち去ってしまった。その後、案の定スピトーンは詰まって、吐き出したワインで溢れかえってしまった。
はっきり言って、ティッシュを捨てる人も捨てる人だが、ホテルの従業員には本当に呆れ返った。それも、どちらもその道のプロなのだから...。

            
食べ散らかされたテーブル。それも接客のプロの仕業....      口に含んだワインを吐き出す容器。スピトーン、スピッティング・バケツと呼ばれる

インポーターの試飲会には基本的にマナーに関する張り紙も手引書もない。それは参加者が小売業や接客業のプロであるという前提からだ。あなたがあなたのお客に対して、いつも行っている気遣いや心遣いがマナーそのものであり、仕事の一環として、その場にいる以上はそれを忘れてはならない。




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