<2007.11.26更新>

おかげさまで今年のボジョレー・ヌーヴォーは、解禁一週間程度で完売することができました。 この場を借りまして、皆様に感謝いたします。 ありがとうございました!

●今年のボジョレー・ヌーヴォーの質はどうだったのか?

今年は夏の時点でボジョレー地区の葡萄の出来は、特別良好な年ではなく、平年並みもしくは若干悪い年ではないかとの情報が入っていました。フランスも世界的な異常気象により少なからずとも葡萄の生育に影響が出ています。7月にはボジョレー地方で豪雨があり、気温と日照不足が懸念されていましたが、8月下旬からの収穫時期が晴天に恵まれ、葡萄の質は上昇しました。日本のニュースなどでは、ヌーヴォーの質はあまり思わしくないような報道がされていましたので心配していましたが、開けてみれば、そんな心配どころか本来のボジョレー・ヌーヴォーらしいフレッシュ&フルーティなワインに仕上がっていました。「100年に一度」と騒がれた2003年は、異常気象による酷暑の年で、葡萄は日焼けし、非常に濃縮された果汁となり、ワインとしては確かに当時流行のこってり系ワインになりましたが、本来のヌーヴォーとは、かけ離れたフレッシュ感に欠けたワインでした。それに比べると今年のヌーヴォーは、本来のベリーやチェリーなどの香りを放つ、フルーティでチャーミングな味わいの「ヌーヴォーらしいワイン」に仕上がったと言えるでしょう。
しかし、これはすべてのヌーヴォーに言えるわけではなく、生産者により大きくバラつきがあったようです。
今年、当店で取り扱った中で特に素晴らしかったのは、ポール・ボーデ社のボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー。ヌーヴォー本来のフルーティさがあり、マイルドでとても滑らか、ほどよい厚みがあって、穏やかな酸と甘みのバランスがとれたワインで、ヌーヴォーとしては、ここ数年のトップ5に入る素晴らしいものと言えるでしょう。
もうひとつはドメーヌ・ブリアのボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー。このワインに関しては残念ながら飲めなかったのです。というのも、予約でほぼ完売状態で店に少し並べたところ、1時間も経たないうちに売り切れて、試飲分を確保できませんでした。このワインは、昨年のボジョレー地方最大のヌーヴォー祭「サルマンテール・デ・ボージュ」で唯一の公式ヌーヴォーに選ばれ乾杯用ワインに使用されました。そして、今年も解禁前の日曜日に行われたボジョレー・ヌーヴォーのコンテスト「トロフィー・リヨン・ボジョレー・ヌーヴォー」で金賞受賞という栄誉に輝きました。このワインを飲めなかったのは、とても残念ですが、実は昨日、当店で保管しておいた2006年産のブリアのヌーヴォーを飲んでみたのですが、これがとても美味しいんです。まろやかで厚みがあって、いまだにヌーヴォーの風味を残していて、色もまだ少し紫を帯びているという驚きの品質です。来年は多めにオーダーしようと今から考えています。


●明暗の分かれた2007年ボジョレー・ヌーヴォー

作柄の良い年はさほど問題はありませんが、今年のような天候が不安定で葡萄栽培が難しいといわれる年は、生産者により大きく品質に差がでる年です。特にボジョレー・ヌーヴォーのような特殊なワインは、それが明確に露呈します。同一地区で同一品種の葡萄を使用し、一斉発売という世界でも唯一といえる特色をもったワインは、生産者の技術力、熱意、判断、愛情...など諸々の諸事情をワインという形に表しました。
今回、当店に来店いただいた幾人かのお客様からこんな言葉を聞きました。
「コンビニで買ったヌーヴォーは飲めなかった」
多分、コンビニで買ったヌーヴォーならば大手生産者の製品には間違いありません。
今年のような難しい年は概して大手生産者のワインの質は劣ります。なぜなら、大手生産者は造るワインの量も膨大で、畑も広大ですから葡萄を一本、一本または一房、一房、管理するには限界があります。それに比べ、小規模生産者ほど小回りがきくため、早いうちから葡萄に手を掛け対策ができるので、天候不順の年であっても、それなりの質の葡萄を実らせてくれます。
すでにこの事は夏の時点で想定していましたから、現地の作柄状況を細かくチェックしたり、昨年の品質を考慮したりして、今年の取扱い銘柄を昨年の10銘柄から5銘柄まで絞り込んだのが功を奏しました。おかげさまで、最高とは言えませんが納得のいく品質のヌーヴォーをお客様に提供できたと思っています。


●ボジョレー・ヌーヴォーの最大輸入国・日本

日本はボジョレー・ヌーヴォーの世界最大の輸入国です。良くも悪くもボジョレー地方の農民やワイン関係者に影響を与えています。
今年は解禁日前にボジョレーワイン委員会より日本に向けて異例の通達(警告?)が発せられました。内容は「解禁日厳守」についてです。ヌーヴォーの解禁日というのはフランスの政令で規定されており、11月の第3木曜日前に飲んではいけないという内容のもので、各輸入業者は解禁日厳守の誓約書を取り交わして輸入しています。
ところがここ数年、この解禁日を破るフライングが横行しているようで、当店も数年前からその事を耳にして、当サイト上で警告してきました。ボジョレー・ヌーヴォーは世界中の人達が同じ日に同じワインを飲んで祝うからこそ価値があるのです。フライングをして我先に飲んだところで自慢できるものでもないし、自らの恥をさらしているだけの事です。
最も悪いのは、それを販売している業者にほかなりませんが、一部の心無い人達のために日本人みんなが世界の笑いものになりつつあります。
今回の通達には次のような文章も書かれています。
「日本市場向けに実施している優遇措置の見直しを含めて検討する必要があると考えております。」
これは日本向けに実施している早期出荷などの優遇措置を見直すということでしょう。


今年のヌーヴォーの解禁日前後からテレビニュースなどでフランスワインが伸び悩んでいるとか葡萄畑を減らしているといった内容の報道を目にした方も多いかと思います。
実際にボジョレー地方でも質の悪い畑を減らし、面積あたりの収穫量を減らし、品質の向上を計っています。つまり、増えすぎた生産量を適正な量に戻そうという試みです。
これには日本も少なからず関わっています。ボジョレー・ヌーヴォーの輸入量はここ10年ほど増加の一途をたどり、2005年あたりにピークを迎えました。そして、今年は昨年の約20%ダウンと伝えられています。推定によると、昨年輸入されたヌーヴォーの20〜30%は売れ残り、廃棄されたり、未だに残っていると考えられます。その大半がスーパーやコンビニで、数年前の酒類販売免許の規制緩和により、多くのスーパーやコンビニで酒が販売できるようになり、大手生産者の大量生産ヌーヴォーが日本に流れ込んだのが原因となっています。あくまで売上至上主義による品切れを起こしてはならないという考え方が招いた結果だと言われています。

ワインは、農産物です。生産量を増やすには、畑から増やしていかなければならないもので、急激な生産量の増加はどこかに歪を生みます。案の定、「ボジョレーの帝王」と謳われるジョルジュ・デュブッフ社は、2006年に原産地詐称事件で摘発されました。ボジョレー地区のワインをワンランク上のボジョレー・ヴィラージュと偽って販売しようとしていたところ、幸いに発売前に発覚し御用となりましたが、日本でこの事件はあまり報道されませんでした。なぜ、大きなニュースにならなかったかは想像にお任せしますが、日本の輸入元が大手酒類メーカーであり、その販売先が大手スーパーや大手コンビニチェーンであることが関係していることは間違いないでしょう。


ホジョレー・ヌーヴォーの輸入量の推移(1ケースは750mlで12本)
   1998年 40万ケース
   1999年 50万ケース
   2000年 40万ケース
   2002年 60万ケース
   2003年 70万ケース
   2004年 90万ケース
   2005年 95万ケース
   2006年 87万ケース
   2007年 69万ケース
(上記データは、鰹造産業新聞社の酒販ニュースの推定数量より抜粋)

2007年のボジョレー・ヌーヴォーの総輸入量69万ケースのうち、サントリーが23.1万ケース、メルシャンが12.9万ケース、アサヒビールが8万ケース、サッポロビールが2.3万ケース、キッコーマンが1.9万ケースとなっており、上位5社で総輸入量の約70%も占めています。

ボジョレー・ヌーヴォーに関して言えば、1998年から2005年のわずか7年の間に輸入量は約2.4倍まで膨らみ、2005年から2007年で約30%も減少したことになります。
急激な増加と急激な減少。これがボジョレー地方の畑の減少の一因になっていることは否定できない事実でしょう。


●近頃の食品偽装事件に想うこと

最近、世の中を騒がせているミートホープや比内地鶏、船場吉兆などの食品偽装事件には、根底に流れる共通したキーワードがあります。それは、「大量生産」、「大量販売」。
生産能力を超える無理な生産や限られた量の原料で大量に商品を生産しようとすれば、どこかに歪が生じるのは当然のことです。
これらの事件はほんの氷山の一角にすぎず、多くの大量生産品に対して同様の疑いがあると皆様も感じているはずです。食料の約7割を輸入に頼っている輸入大国・日本、その一番の理由は「安い」からであり、安い物には安いなりの理由が必ずあるという事を肝に銘じておかなければなりません。
今後、消費者は販売者側の誇大広告やニセ情報に惑わされることなく、自らの舌と目で商品の価値を決める必要があります。また、そういう時代になってきたといえます。


ページトップへ